1958年生まれ。
編集者、AV監督、音楽PVディレクターを経て執筆業。
著書
『アダルトビデオジェネレーション』(メディアワークス)
『猫の神様』(新潮社)他。
公式ブログ
1958年生まれ。
編集者、AV監督、音楽PVディレクターを経て執筆業。
著書
『アダルトビデオジェネレーション』(メディアワークス)
『猫の神様』(新潮社)他。
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▶2012-04-10『ライター東良美季による店舗探索コラム』
愛好書店茂原店〈後編〉
▶2012-04-05『ライター東良美季による店舗探索コラム』
愛好書店茂原店〈前編〉
▶2012-03-15『ライター東良美季による店舗探索コラム』
サンブック稲城店〈後編〉
▶2012-02-21『ライター東良美季による店舗探索コラム』
サンブック稲城店〈中編〉
▶2012-02-07『ライター東良美季による店舗探索コラム』
サンブック稲城店〈前編〉
▶2011-12-12『ライター東良美季による店舗探索コラム』
ライブイン那珂店〈第4回〉
▶2011-12-05『ライター東良美季による店舗探索コラム』
ライブイン那珂店〈第3回〉
▶2011-11-28『ライター東良美季による店舗探索コラム』
ライブイン那珂店〈第2回〉
▶2011-11-24『ライター東良美季による店舗探索コラム』
ライブイン那珂店〈第1回〉
▶2011-11-07『ライター東良美季による店舗探索コラム』
未来書房・あすなろ書店〈後編〉
▶2011-10-31『ライター東良美季による店舗探索コラム』
未来書房・あすなろ書店〈中編〉
▶2011-10-27『ライター東良美季による店舗探索コラム』
未来書房・あすなろ書店〈前編〉
▶2011-09-12『ライター東良美季による店舗探索コラム』
東京書店・松原店〈後編〉
▶2011-09-08『ライター東良美季による店舗探索コラム』
東京書店・松原店〈中編〉
▶2011-09-06『ライター東良美季による店舗探索コラム』
東京書店・松原店〈前編〉
▶2011-05-30『ライター東良美季による店舗探索コラム』
トレンド書店・北九州折尾店〈後編〉
▶2011-05-23『ライター東良美季による店舗探索コラム』
トレンド書店・北九州折尾店〈中編〉
▶2011-05-16『ライター東良美季による店舗探索コラム』
トレンド書店・北九州折尾店〈前編〉
▶2011-04-18『ライター東良美季による店舗探索コラム』
トレンド書店・ウエルタ新宮店〈後編〉
▶2011-04-11『ライター東良美季による店舗探索コラム』
トレンド書店・ウエルタ新宮店〈前編〉
▶2011-03-29『ライター東良美季による店舗探索コラム』
下関から九州へ渡る〜キカタン女優って何だ?〈後編〉
▶2011-03-24『ライター東良美季による店舗探索コラム』
下関から九州へ渡る〜キカタン女優って何だ?〈前編〉
▶2011-03-15『ライター東良美季による店舗探索コラム』
トレンド書店・下関長府店〈後編〉
▶2011-03-01『ライター東良美季による店舗探索コラム』
トレンド書店・下関長府店〈前編〉
▶2011-01-31『ライター東良美季による店舗探索コラム』
トレンド書店・防府今宿店〈後編〉〜広島から徳山、そして防府へ向かう
▶2011-01-20『ライター東良美季による店舗探索コラム』
トレンド書店・防府今宿店〈中編〉〜広島から徳山、そして防府へ向かう
▶2011-01-13『ライター東良美季による店舗探索コラム』
東京書店・松原店〈前編〉
▶2010-12-20『ライター東良美季による店舗探索コラム』
インターミッション〜intermission〈なかがき〉「ちょっと休憩して、セルビデオがどのように生まれたかを考えてみよう!」
▶2010-11-29『ライター東良美季による店舗探索コラム』
トレンド書店・東広島八本松店〈後編〉
▶2010-11-22『ライター東良美季による店舗探索コラム』
トレンド書店・東広島八本松店〈中編〉
▶2010-11-15『ライター東良美季による店舗探索コラム』
トレンド書店・東広島八本松店〈前編〉
▶2010-11-01『ライター東良美季による店舗探索コラム』
トレンド書店・東大阪外環店〈前編〉
▶2010-10-15『ライター東良美季による店舗探索コラム』
トレンド書店・26号線葛ノ葉町店〈後編〉
▶2010-10-01『ライター東良美季による店舗探索コラム』
トレンド書店・26号線葛ノ葉町店〈前編〉
▶2010-09-17『ライター東良美季による店舗探索コラム』
トレンド書店・和歌山四ヶ郷店〈後編〉
■メーカーがHPで安く通販するのは業界全体の問題でもある
大阪吹田市の〈あすなろ書店〉さん、A店長とT氏へのインタビュー。その続き。今回は、現在何故「アダルトDVDが売れない」と言われ続けているのか、今後の展望は? そして商売をする上での哲学に至るまで、お話はさらに深いところへと進みます。
──ところで、未来書房グループさんというのは、どの店舗さんも特色的には共通してるんですか。
A「ええ。共通してると思います。まずはアダルト、アダルトしてない、というところじゃないでしょうか。外観、看板からしてそうですし、一般コーナーをちゃんと作らせてもらって、普通のお客さんも来て貰えるように心懸けています。やっぱり、あんまりにもお店がアダルト全開にしてると、お客さんも入りにくいやろうし、知ってる人に会ったら恥ずかしいというのもあるかもしれない。それで一般コーナーを充実させて、普通のお客さんも来れるお店ですよ、とアピールしてるのがウチのグループの特徴ですね」
──先ほど入って来た時、僕もそう感じました。入口を抜けてまず眼に入るのが一般作のDVD、そして何と言っても眼を惹かれたのは、レジの手前にあるコミックの大人買いコーナーでした。ああいうのは、一般書店でもなかなか買えないですよね。他に、こちらで扱っている商品どういったものになるでしょうか。
A「中古DVDはかなり充実してると思います。ウチは雑誌は置いてなくて、アダルトグッズ、ランジェリーも少ないですけどあります。それと駄菓子とか生活雑貨なんかも一般コーナーにあって、後は品物ではないですけど、スロットにUFOキャッチャー」
──中でも主力はやはり新作のアダルトDVDということになりますよね。で、この業界、もう何年も「アダルトDVDが売れない」と言われてるんですが、その状況についてはどう思われますか。
A「正直なところを申し上げてしまうと、メーカーさんの責任、大きいと思います。小売店としては『通販はやめて欲しい』、これだけはやはり言いたいですね」
T「通販といっても、一般の小売店が通販しているのではなく、メーカーの公式サイトで、定価よりも安く売られている。そうなると僕ら小売店はもうお手上げです。その価格がお客さんの眼に入ってますから、店頭で『なんでこの値段なの?』とクレームが付くんです。何とも対応のしようがないですから」
──ああ、そうか、お客さんは当然、「あれ、ホームページには幾らって書いてあったよ」と文句を言いますよね。
A「ええ、それが一番キツイんです。僕らはメーカーさんから卸して、それを売っています。にも関わらずメーカーさんは小売店に卸しながら、一方では自社通販で安く売ってるんですから」
T「例えば同業他社さんが、小売としてネット通販するのは、品物が動く、お金が流れるということで良いとは思うんですが」
これは本連載『店舗探訪』を通じて、ほとんどの店長さんが挙げられた問題点だ。昨年夏の〈トレンド書店〉ツアーでも何度も耳にした。特に〈和歌山四ヶ郷店〉F岡店長が、こう言われていたのが印象的だった。
「自社のHPで小売店より商品を安く売るなんて、一般の業界では考えられないことです。例えば家電業界で、パナソニックやソニーが、テレビやDVDデッキを自社のホームページで小売店より安く売るなんて有り得ないやないですか。『買うなら店舗へ行ってください』『お店で買う方が安いですよ』というアナウンスをする。それは別に小売店に媚びてるわけじゃなく、業界全体の業績アップを考えるからやと思うんです。ところがアダルトの場合、平然と店より1,000円引きとかで売ってる。結局、自分とこさえ儲かればそれでいいという発想なんです。それでは未来が無いような気がするんですね。作り手やメーカーがそういう意識だと、小売店も弱くなってしまう。そうすると裾野がどんどん狭くなっていって、結局誰も得しないと思うんですが・・・」と。
百歩譲って、もしもメーカーが「もう小売店なんて必要ないんだ」と言うならそれも良いだろう。Amazon.co.jpを例に出すまでもなく、インターネットと宅配便の連携がこれだけ発達すれば、「ウチは通販だけでやっていきます」というスタイルのメーカーが現れても不思議はない。けれど、店長さん達が口を揃えておっしゃるのは、多くのメーカー営業マン氏は、「売上げは小売店さんにかかってますから」と言うのだそうだ。アダルトDVDに於いて、通販のリスクは意外に多い。まずはタイトル数が膨大なので、よほどのマニアでないと自分の好みの作品を選べない。配達してもらう時、奥さんや子供のいる人は「中身がバレるのではないか?」と心配がある、等々。
ならばお互い歩み寄るしか方法はないのではないか? 小売店側は、グループ店、もしくは流通グループで結束して、メーカーに対し「公式サイト通販と店舗小売の価格を同等にするように」と正式な要望書を提出するとか。一方メーカー側も、例えばネット通販で値引きするのは、発売前の予約販売のみにするとか──「予約なら安い!」ということになれば、ユーザー側も新作に対して今より期待が高まり、AVファン全体としても盛り上がるような気がするのだけれど、どうだろうか?
アダルト店には珍しい、駄菓子、生活雑貨のコーナー。「値札のない商品10円」は安い!
■若い男性は何故アダルトDVDを買わなくなってしまったのか?
──しかし、現在そういう状況である限り、店舗さんとしては自分達が踏ん張っていかねばならないわけですよね。そこで、どういう改善策が考えられるでしょう?
A「ええ、そういう意味でも、未来書房グループ全体で一般コーナーを充実させて、集客を図ろうとして来ました。その中でも、やはり男性向けに特化していきたいなという展望がひとつあります。何しろ店を遅くまで開けてますから。他の未来書房でしたら24時間営業のところもありますし。そういう利点を生かして間口を拡げて、どんどん来店して頂いて、そうすると、男性のお客さんですから、やはりアダルトに眼がいくんじゃないかと思うんですね」
──確かにそうなんですよね。すべての男性がAVを日常的に観ているわけじゃない。Aさんご自身がそうであったように、観たことはあるけれど買ったことのない人は多いわけで。そこで、男が好むものって別にアダルトだけじゃないですから、ゲームにもマンガにも興味がある。もちろん、AVファンは一般映画のDVDを観ないわけじゃないから、そこを間口にしていくわけですね。
A「ハイ。他には先ほどの話と繋がるかもしれませんが、未来書房グループとしても、ホームページ上での通販を展開していければいいかなと思ってます。現在のHPは店舗の紹介等しかしていないので。そこではアダルトDVDだけじゃなく、店で好評なコミックセットの大人買いなんかもやっていきたいですね」
──繰り返しになりますが、今、メーカーさんや監督さんにお話を伺うと、「とにかくアダルトDVDが売れないんだ」という話になります。そこで現場におられる方のご意見を聞きたいんです。Aさんの個人的な感想でもいいのですが、今、何故アダルトDVDは売れないと思いますか?
A「うーん、難しいですけど。まず、次の世代が入って来ていないということはあると思います。年配の人はネット環境に疎いと思いますから、情報が入りにくい。でも若い子はパソコンは当たり前、ましてや携帯は必須。そうすると無料の動画もありますし、ネットでエロが簡単に手に入りますから、そういう人がDVDを、わざわざお店に来て買ってくれはるかというと、それは相当難しいでしょうね」
──このデフレ不況の時代、若い人にとって、そもそもアダルトDVDは決して安いものじゃないですからね。
A「ええ。現実問題として、今、ウチのお店に来られる方は30代を通り越して40代が主流です。で、そういう方々もいつまでアダルトDVDを買い続けてくださるかというと、永遠にというわけにはいかないでしょうし」
──Tさんはどう思われますか?
T「ひとつは彼が今言ったことになると思いますが、次の世代ということに関してを言うと、お小遣いであれ給料であれ、もらってるお金は昔と変わらないのに、使い方があまりに広がり過ぎてますよね。我々の若い頃は楽しみと言えば映画とかレコード聴くとか、麻雀、パチンコくらい。でも今はそれに加えてゲーム機はたくさんありますし、携帯でも色々出来る。パソコンは、仕事にも遊びにもコミュニケーションにも必要でしょうし。そう考えると大変なのはアダルトDVDの業界だけでは無いような気もします。また、若い人に関してもうひとつ思うのが、例えば僕の友人のお子さんが大学生なんですけど、聞いてみると学生食堂を始め学内は基本禁煙で、喫煙室があるそうなんですが、そこにいるのは女子学生ばかりだそうです。今は男の子の方が煙草を吸わない。それと、車に興味のある男子というのもあまりいないそうです。つまり男の子っぽい男の子がどんどん減ってるのかなあ、という気がしますね」
──ふむ。やはり昨今よく言われる男性の草食化なんでしょうか。そう言えば僕達AVライターの世界でも、ハッと気づくと女性が多くなってるのに気づく。実際、この〈men's NOW〉のコラムでも、遠藤遊佐さん、雨宮まみさん、宮良一美さん、花房観音さん他、もう半数以上が女性なんです。
コミック全巻セットが並ぶ。ネット通販が始まった時には、きっと目玉商品になるはず。
■Aさん、Tさんがこの仕事を通じて培った哲学とは?
──この連載では必ず最後にお聞きする質問なんですが、このお仕事をやられて、Aさんが学ばれた最も大きなこと、大切なことというか、大げさですが、培われた哲学のようなものがありましたらお聞かせ願いたいのですが。
A「ウーン、哲学ですか、何でしょうね。難しいなあ(笑)。ただ、ひとつ言えるのは、この仕事に『終わりはない』んやな、ということですね。お店作りもそうですし、お客さんへのサービスということでも、そこには正解もないしゴールもない。ただ、毎日ひたすら一生懸命仕事する、考えて考えて、身体を動かし続ける、ということやないでしょうか。例えば店の、あるコーナーをキッチリと、ビシッと綺麗に作り上げたとして、それは半年もすれば古くなってしまいます。そうしたら、また一から作っていかなアカン。延々とその繰り返しです。だから終わりはないんやなあ、と思いますね」
──ああ、そうか。何かを作り上げても作り上げても、これで終わり、これが完成形という日は決して来ないんですね。
A「ええ。ひとつのコーナーを作って、出来たらその隣、次はまた隣とやって行って、お店全体が出来上がったとしたら、最初に作ったコーナーはもう古くなってるんです。だからまた一からやり直しになります」
──うーん、深いですね。終わりがない。完成がないということは、今、この時が大切、今しかない、ということもなりますよね。例えば「今日はしんどいからこのくらいにしよう」「明日にしよう」というわけにはいかない。明日は明日でまた状況が変わるわけですものね。
A「ホンマそうです。月の売上げの目標を決めて、首尾よく達成したとしても、翌月また落ちれば意味ありません。結局、今この時にベストを尽くすしか、僕らに出来ることってないような気がします」
──ああ、まさに哲学だなあ。Tさんはいかがですか?
T「そうですねえ。僕はこちらにお世話になるまでに色んな仕事をして来たので、コツコツやらなアカンというのはどんな職業でも一緒やとは思うんです。ただ、僕の上司、ココのオーナーというのが、おそらく他の人から見たらきっと変わった人やと思うんですけど(笑)、細かいことは一切言わないんです。言うことはひとつだけ、『基本が大事や』ということだけなんです。僕はたぶん、未だにそれが出来てないと思うんですが。彼が常に言うのは、『人間にとって一番根本的な大事な部分、それを見つけないと何も始まらないよ』ということなんです。だからそれを早く見つけるように努力しなさい、と」
──ウーン、ひょっとして、それこそが哲学なのかもしれませんね。オーナーさんは具体的には教えてくださらないんですか?
T「ええ。場面場面で、言葉の端々には出るんですが。具体的には言わないです。ただ、僕らが周りで見てますと、彼にはそれがしっかりあるような気がします。だから色んな局面で、例えば我々従業員と話す時、業者さんと仕事の話をする時、常にブレないです。物事を、安直に眼で見たり耳で聞いたりしないんです。いつも相手の言葉を心の奥底で聞いているというか。それは彼が大切にしている何かが、根っこの部分にあるからだと思うんです」
──フム。僕なんかが考えることはきっと浅はかで、オーナーさんには「違う!」と言われてしまうかもしれませんが(笑)、人間にとって一番大切なこと、例えばそれは〈優しさ〉であったり〈真心〉であったり〈感謝の気持ち〉だったり、人それぞれ違うかもしれないけれど、心にそれがあるか無いかでは大きく違いますよね。しっかりとあれば、きっとオーナーさんがそうであるように、常にどんな時でもブレることはない。
T「かもしれません。僕もそれが何かは未だにハッキリとは判らないんですが、ただ、それを探し続けているということで、日々良い緊張感を持って仕事が出来てるとは思います」
入口を入って左手。スロット・コーナーの向かいにはUFOキャッチャーが。
■クレームを言うお客さんは、勇気を出して店を叱ってくれたのだ
──何故こういうことをお聞きするかというと、やはりお二人ともご商売をされてるというか、お客様を前にして仕事をされている。そこから学ばれることって大きいんじゃないかと思うんです。その点僕はたった一人で文章を書く人間なので、僕にとっての〈お客さん〉というのは常に〈読者〉であって、顔が見えない。だからその辺をお聞きしたいんです。
T「そうですね。お客様と関わるということでは、当然嫌なことも良いこともあります。ですからそこで勉強になることはたくさんありますね。『何故こんなこと言わはるんやろ?』と、ついそう思ってしまう、そんな方も正直、時にはいらっしゃいます。ただ、先ほど言った根っこの、基本というものがしっかりしていれば、こちらが揺らぐことはありませんし、無意味に怒ったり、嫌な気分になることは何もないと思うんですね。それは来店されるお客様に限らず、色んな業者の方と商談する時も同じです。それはこちらが会話が上手に出来て得をするという話ではなくて、お互いが良い関係で、何事に関しても良い契約が出来る、良いパートナーになれる、その元になると思うんです。根っこに大切なことがあればこそ、お互いのメリットを考えることが出来るという」
──ああ、そうか。例えばお客さんがいらして、『何ンやこの店は、俺が探してる商品置いてないやんけッ』と不条理に怒鳴り散らしたとしても、そういう時オーナーさんの言われる基本、本当に大切なことさえしっかり持っていれば、決してこちらはむやみに腹を立てる必要もない。何故ならそのお客さんは、ひょっとしてお家で嫌なことがあって、それを引きずってるのかもしれない。
T「ええ、まさにおっしゃる通りで、むやみに怒鳴ったり、不条理に怒ったりされる方っていうのは、きっと何か別に原因を持っておられるんですね。お店で、その時その場で起こったことというのは、大抵は単なるきっかけに過ぎない。そういうことも、僕らが緊張感なくダラダラと普通に生きていたら、きっと気づかないと思うんです。『あっ、この人怒ってはる』とただ思って、形だけ『申し訳ありません』と謝っても、その方には何も通じないと思うんです。そうじゃなくて、『いったい何が悪かったんやろ』としっかり考えながらお詫びすれば、お客様も判ってくださるんですね。最初はクレームから始まったものが、お話してるうちに『よっしゃ、また来るわ!』と笑顔で帰っていかれて、結果的に常連になってくださったりすることも多いんです」
A「僕もそこが紙一重やと思います。お客さんが僕らの誠意を感じてくれはって、また来ようと思ってくださるかどうか。そこで我々店の者が怒ってしまったらいけない。怒るのは簡単やと思うんです。『二度と来るな!』と言うのは楽です。でも、それをしてしまったら、その方との縁はそこで終わってしまう。何ンで怒ってはるんやろ、どうしたら満足してもらえるんやろうと考えて一生懸命お詫びすれば、それは必ず通じますから。結果的にとても大切なお客さんになってくださることが多いんです」
──うーん、イイですねえ。よくマンガにある、真剣に喧嘩した同士が親友になる、みたいな(笑)。
A「ホンマそうです(笑)。僕なんかもバイトで入りたての頃は、頭ごなしに怒られたりすると、思わずイラッとしてしまったこともあります。でも、お客さんが怒ってくれはるというのは、何かウチの店に期待してくれてるからだと思うんですね。最初から『この店には何言うても無駄や』と思ったら、何も言わずにサッと帰られるでしょう。同業他店さんはたくさんありますから。普通の方は、二度と来なければそれで済みます。でも、そこを勇気を出して叱ってくれはった、クレーム付けてくれはったわけですから。何十人、何百人の人が『あそこの店アカンな』と、何も言わずに黙って帰られたかもしれないわけで、その方はお客様の代表として言ってくださった。そのお陰で、お店は『ダメだった所』『怒られたところ』に気づき、直すことができるんだと思います」
──そうですよね。こういうアダルトのお店というのは、大抵の方は足を踏み入れるのが少し恥ずかしい。出来ればソッと来て、会話もなくソッと帰りたいはず。そこを「これ、ダメだろう!」と指摘してくれるのは、とても勇気が要ることですよね。
A「ですから最初にも言いましたが、僕らにとってはお客さんが何かを言ってくださる、伝えてくださる、それがすべてなんです。お客さんが欲しがるものを並べる、お客さんが心地良いお店を作る。僕達のすべきことはそれやし、それしか出来ないんやろうなあとも思います」
──やはり深いなあ。今日はお忙しい中、ありがとうございました。
Aさんが最後に言われた「お客さんが勇気を出して叱ってくれた──」、良い言葉だなあと思った。そしてそれは、Tさんの語ってくださった、オーナーさんの哲学、「人間にとって一番根本的な大事な部分を持ちなさい」という意識があればこそ、気づけることではないだろうか。
商売とは、仕事とは何なのか? ということを深く考えさせられるお話だった。僕なんかも普段、「別に金のために原稿書いてるわけじゃないぜ」なんて言ってみたりする。「俺は文章を書くことが好きなんだ」と。その気持ちに決して嘘はないけれど、でもお金を頂けないと、その好きな文章を書くことも出来ない。しかし、かと言って金を稼ぐことが本位になってしまうと、今度は本当に大切なことを失ってしまう。
お店というのも、きっとそういう場なのだろう。AさんとTさんが言われたように、お客さんも、メーカーも含めた業者さんも、そしてお店の方々も、全員が気持ち良く集えた時、そこは最高の空間になる。決して簡単なことではないが、そう思った。
これを書いている今は10月の半ば、朝晩はずいぶん冷えるようになったが、この時は8月の初旬。日本中が猛暑に包まれていた。大阪も暑かった。けれど〈東京書店松原店〉店長・てんてんさんのお話共々、しみじみと行って良かったなと思えた取材小旅行だった。
午前10時開店、早朝5時まで営業。遅くまで開いているところが集客の強みだ。
近日行われるイベントは上記リンクから!!
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マリオン 豊田薫・後編
(2月27日更新)
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